リリース時の胴体の最適位置という難題
胴体の動きについてお話する際に押さえてほしいポイントは、
胴体の位置がどこにあるのが最適なのか?という問題に、明確な答えがいまだに出ていないという点です。
胴体の位置は、肩の位置と動きに影響し、肩の位置は腕の位置と動きに影響します。
プロの投手を分析してみても、様々なタイプがおり、どれが望ましいのか現時点で優劣がつけずらい状況です。
横からみたときの胴体の角度が、直立に近いタイプから、ほぼ水平に倒すタイプまで満遍なくおり、
正面から見たときの胴体の角度も、アンダースローから超オーバースローまで満遍なくいます。
それぞれの組み合わせで、立体的な位置でいえばそれこそ無数のパターンがあるといえます。
このように無数の位置がありますが、正面からみたときの胴体の角度は、あまりに極端でなければどれでもよいといえます。
(ただし、統計的には、いわゆるスリークウォーター~サイドスローの角度が最もスピードが出やすい位置といえます。)
一方、横からみたときの胴体の位置については、マウンドからの投球ということとでいえば、胴体はある程度前に倒すフォームが望ましいといえます。
加速したい方向に向かって肩甲骨が出て行くような動きが自然だからです。
肩甲骨は背中に沿って動きますので、背中の面を前に倒す必要があるということです。
例えば、肩の使い方が非常に似ている槍投げでは、
槍を投げたい方向と胴体の傾きがほぼ一致してます。
ボールを前方下のキャッチャーに投げる投手なら、身体は前に向かって倒すほうが有力なのではないか?と考えることができます。
さらに、胴体を垂直にしたまま投げる投手に肘の故障が多いことも理由の一つです。(ひじを壊しやすいフォーム)
これは現在検証中です。
胴体はエネルギーの中継地点
脚の動きからスタートし、発生したエネルギーは、最終的に指先を加速させるために使われていきます。
軸足の動きで発生したエネルギーは、主に利き手の半身を伝わっていき、胴体を経由して脱力している利き腕の外旋を引き起こします。
また、踏み出し足が着地したことで、脚が急停止し、腰も合わせて急停止、並進エネルギーが行き場を失って、
脚から腰へ伝わり、腰から胴を伝わって胴体を前に倒す力として働きます。
胴が倒れることによって、投球方向へ肩甲骨平面が揃い、利き腕が後ろに取り残されることで外旋が更に強まります。
このように、胴体はとくに意識するポイントなどはないのですが、
なるべく脱力した状態で、
①軸足から利き手半身を経由して利き手に外旋のきっかけが起こる。
②踏み出し足と腰の急停止により胴体の前傾が発生する。
の2つがスムーズに自然に起こるような身体のポジショニングを見つけておくことが重要です。
胴体の主な役割は、エネルギーの中継、腕のスイング基点であり、それらのためのポジショニングに徹することです。
最後に、これは感覚的なはなしですが、(科学的に調べる方法があればいいのですが)
うまく身体を使えたときには、軸足由来のエネルギーは、ほぼ右半身だけを伝わっているような気がします。
つまり、右の胴だけをその流れに乗せて、指まで伝達している感覚です。
参考:読者様からの御質問等(右半身で竹ざおを作ってしならせて弾くイメージ)
股関節とか胴体が、別々のエネルギーでバラバラに動くということは体感的にはあります。
胴体を「回転させる」とか「捻る」とかよく聞きますが、一まとまりの部位と考えないほうがよいと思います。